これからのシーズンといえば「春」。卒業や新入学、就職、転勤など、新しい生活に向けての準備で忙しくなる季節ですね。そして春の訪れと共に、足並みをそろえて、短期・単発のお仕事市場も活況に! 短期・単発のお仕事の人気の秘密は、以前の記事、「単発アルバイトには危険を冒す価値がある!?」でもご紹介しましたが、お仕事探しの際に気をつけたいのが、「日雇い派遣」のこと。「日雇い派遣」とは、2012(平成24)年10月より施行された労働者派遣法改正法により、原則禁止になった派遣のこと。
「法律で禁止されたなら求人募集も出ないはずだし、気を付ける必要なくない?!」
と思われた方。実はそうではありません!カギは、この法令の「原則禁止」という言葉の意味にあり。つまり、原則があれば例外もある、ということです。では、いったい、どのような働き方がOKで、どのような働き方がNGなのか・・・応募する側も知っておきたい「日雇い派遣」の原則と例外。しっかり理解し、短期・単発のお仕事探しを、賢くスムーズに、しちゃいましょう!
そもそもなぜ、「日雇い派遣」は原則禁止になったのでしょう?思い返せば2008(平成20)年秋のリーマンショック…その後の不況により、「派遣切り」「年越し派遣村」「ワーキングプア(働く貧困層)の増加」などが、社会問題化しました。このとき「雇用を不安定にしている」原因として、問題視されたのが「日雇い派遣」でした。そこで時の政府は考えます。「日雇い派遣」という常に不安定な雇用形態を、継続して行いにくくしてしまおうと! そうすることで実現されるであろう、中長期間にわたる安定的雇用の確保を目的として、労働者派遣法の改正が行われたのです。
それでは、どのような働き方が「日雇い派遣」なのでしょう。原則禁止の対象となったのは、30日以内の雇用契約において行われる派遣です。1日だけも、10日間でも、29日間も30日間も、雇用期間が30日以内での派遣であれば、原則禁止。ところが、雇用期間が、31日以上の場合は、「日雇い派遣」の原則禁止には該当しません。
一方で、雇用期間が30日以内の「日雇い派遣」であっても、禁止の対象から外された、例外の「業務」と「対象者(働く人)」が存在します。つまり、「日雇い派遣」でも例外的に、働くことができる業務や、働くことのできる人がいるということです!
以下の業務は日雇い派遣であっても働くことが認められています。
ソフトウェア開発/機械設計/事務用機器操作/通訳、翻訳、速記/秘書/ファイリング/調査/財務処理/取引文書作成/デモンストレーション/添乗/受付・案内/研究開発/事業の実施体制の企画、立案/書籍等の制作・編集/広告デザイン/OAインストラクション/セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
さらに、これらの業務以外でも、次に記載する要件のいずれかを満たす“人”は、日雇い派遣で働くことが認められています。
A.60歳以上の方
B.雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生)
C.生業収入が年間500万円以上の方(副業として派遣労働を行う場合)
D.生計を一にする配偶者等の収入により生計を維持する方で、世帯収入の額が年間500万円以上(主たる生計者以外の方)
上述したように、「日雇い派遣」の原則禁止には例外要件があります。とはいえ、この例外要件、だいぶ難解・・・もはや考えることすら面倒・・・。いやいや、あきらめること無かれ! ここでは、特にみなさんから多くの質問が寄せられる年収要件について、徹底解剖してみます。
「生業」とは、複数の仕事をしている場合で、その中で最も収入額が高い仕事のこと。この業務こそ、「生業」=「主たる業務」となります。この「主たる業務」の年収が、500万円以上であれば、「C.生業収入が年間500万円以上の方」に該当します。例えば、Aさんが、3つの仕事を掛け持ちしていたとします。1つ目の仕事は年収50万円、2つ目の仕事は年収100万円、3つ目の仕事は年収550万円だっとします。この場合、Aさんの「生業(主たる業務)」は3つ目の仕事となり、その額が年収500万円を超えているため、例外要件を満たすこととなります。もし、Aさんの3つ目の年収が450万円だったとしたら・・・Aさんの年収総額は、3つあわせて600万円となりますが、最も収入額が高い仕事(生業=主たる業務)は、3つ目の仕事である450万円。Aさんは年収総額で500万円を超えているものの、生業収入が500万に満たないため、「日雇い派遣」では働くことができないこととなるのです
「主たる生計者」とは、世帯全体の年収のうち、50%以上を稼いでる方のこと。例えば、夫の年収が300万で妻が200万の場合、世帯年収は500万円。夫は、300万の年収があるため、世帯全体の年収に占める割合は、60%です。一方、妻の年収は、200万円のため、世帯全体の年収に占める割合は、40%。この世帯の場合、例外要件にある、世帯年収500万以上に該当し、且つ、「主たる生計者以外の方」に当たるのは妻。そのため、「日雇い派遣」で働けるのは妻ということになります。
「日雇い派遣」で働くことができる人は、上述のA~Dいずれかの要件を満たす方。派遣会社は、派遣スタッフさんが、どの例外要件を満たしているか、確認した上で、お仕事のご紹介をすることを義務付けられています。この確認は、免許証や保険証といった年齢確認のできるもの、学生であることを証明する学生証、源泉徴収表や所得証明といった収入を確認できる公的書類等の提示をお願いし、行われます。例えば、上述のDに該当する場合、本人年収に加え、世帯年収も証明する必要があるため、ご家族の源泉徴収票や所得証明書等も用意する必要があります。
現在は禁止されている「日雇い派遣」。現在、あちらこちらで、「日雇い派遣」原則禁止のあおりを受け、就業機会を失っているとの、多くの声が上がっています。「日雇い派遣」原則禁止は、制定された本来の目的を実現するどころか、労働者の幅広い働き方や、企業の柔軟な人材戦略を妨げているとの意見も出ています。この声に後押しされて、規制緩和へと見直される動きもあり、今後の動向にも注目です。
いかがでしたか?原則禁止となった「日雇い派遣」でも、働ける業務があり、働ける人がいるということを、ご理解いただけましたでしょうか? 「日雇い派遣」の求人募集記事には、応募資格として、例外要件についての記載がされています。お仕事に興味をもったときには、応募資格を確認するのとあわせ、ご自身が、応募可能なお仕事かどうかを見極めながら、効率良くお仕事を探していただくことが大切ですね。
冒頭に触れた2008(平成20)年末から2009(平成21)年初にかけて行われた「年越し派遣村」。この参加者の構成を知ってますか?
▼ 不況による失業者 19.8%
▼ 元々の生活困窮者 57.9%
▼ 「派遣切り」にあった方 20.6%
名前こそ「年越し派遣村」ではありますが、実際に「派遣切り」にあった方は全参加者の1/5に過ぎません。派遣切り」自体が大問題であることは間違いありません。とはいえ、その参加者の大半が、「派遣」とは無関係であったことは、しっかりと理解しておきたい事実です。